2月6日、休みで家にいると携帯が着信。発信者は「下田海中水族館飼育課」・・・
なにかあったぞ!?と、恐る恐る出ると「白浜の尾ヶ崎に鯨が漂着した」という内容の話。
急いで他の飼育員とともに現場へ。
現場に到着するとすでに臭います。鯨はすぐに目につきました。「おお!でかいぞ」
腐敗はそれなりに進んでいて死後5日くらいかな?という状態。
そして近くまで行くと種類も判明。「セミクジラだ!」「セミクジラ」はその個体数も
少なく、こんな形でもお目にかかれる機会はそうは無い。
このように鯨が漂着してしまった場合、漂着した市町村が処理しなければなりません。
その処理方法等については役場の方達と協議させていただきながら最善の方法を探します。
水族館の飼育係とすれば、当然研究などに使用される組織や寄生生物の採集がしたいですし、
出来る事なら骨格標本にするなどしてなんとか貴重なこの「セミクジラ」を活かしたい。
しかしながら、その漂着した場所は「岩ノリ」や「ヒジキ」が採れる漁業者の大切な魚場。
すでに鯨から流れ出した油でべっとりと波打ち際は白くなっています。当然一刻も
早く撤去したいとなります。
撤去には大きな費用がかかります。当然、解剖や骨格標本の作製とした場合にも
大きな費用がかかります。また標本を作るにしても、鯨を埋められる場所が見つかりません。
「一刻も早く撤去」の方向で考えると、私たちが考える有効利用は不可能に近く、
沖に引き出し沈める他ないだろうという結論となりました。
非常に残念でもったいないとは思いますが、下田市役所の担当者の苦労や漂着場所近くに住む人や
漁場としている漁師さんの事を考えれば・・・。
それでも下田市役所の御好意で、引き出した後に可能な範囲での採材作業をさせていただける事になり、
出来る限りの物は採取する事に成功しました。そればかりか、沖に沈める作業にも
同行させていただけました。沈めるだけ・・・と思う方達は多いいかと思います。
とんでもありません、これがなかなか大変な作業で貴重な体験をする事となりました。
この作業の中で「体長はおおよそ18m」という事も判明。船上のクレーンで吊り揚げたところ
体重も53tでした。今回の記録を何かの展示にもつなげたいなあ。と、考えています。(HA34浅川)